ジョイズブートキャンプ7日間プログラム

ペリスクールには、毎年やってくる豆俵高校生徒のために小さな宿舎が用意してある。
そこで寝泊まりし決戦までの準備をするのだ。
その他ペリスクール内の、体育館や図書室、食堂などは自由に使用することができる。

ペリスクール四天王との頭脳戦の内容は決戦当日に明かされる。
文明達は早速決戦のための準備について話し合うことにした。

文明「四天王との戦いまで一週間しかない、内容もわからない状況だしこれからどうしようか…」
榎戸「そうだな。この宿舎には先輩達が残していった本やノートなんかもあるみたいだし、まずはそこから情報を得よう!」
ジョイ「ノー!ノー! ココハ アメリカ! オレガ レスリング オシエル!」

ジョイはレスリングの学生チャンピオンらしい。
テイクダウンとトップコントロールが重視される今の総合格闘技において、レスリングは必須科目だ。
何をしていいかもわからないので、満場一致で取り敢えずジョイに従うことに決定した。

この日から地獄の特訓が始まった。
ジョイのレスリング式フィジカルトレーニングは、ジョイ&モンズJrに比べて圧倒的に華奢な日本人3人の体を着実に成長させていった。
練習後半になると居なくなる父さんは
「頭脳戦は俺に任せろ」
といって宿舎に置いてあるスタンドアップコメディのハウツー本を熱心に読んでいる。
朝昼夜の食事もしっかりと管理され、心身ともに充実した日々を送っていた。
夜は先輩達が置いていったのであろうニンテンドー3DSで脳トレをやった。ロッキーシリーズやジャッキーの蛇拳や少林寺木人拳のDVDなんかもあり、皆で見て闘志を高めた。

決戦前夜。
この日の練習は明日に備え早めに切り上げ宿舎で体を休めた。
ついに明日、四天王との未知の戦いが始まる…

ビーチパーティー

生徒達の盛大な拍手はまだ続いていた。

急にスポットライトを当てられた僕達は驚いて尻もちをついていた。
モンズJrとタコ頭は肩を組みサムアップをして
ステージ下にいるカメラを持った生徒達に笑顔を向けている。

「ヘイ、ユー!ゴー!」

ステージの袖から一人の生徒が顔を出し、僕達だけに聞こえる声で呼びかけた。
床に手をついたまま周りを見渡していた僕達はいそいそと立ち上がり、モンズJrとタコ頭の元へ向かう。

大声で叫び派手に尻もちをついただけに少し恥ずかしかったが
500人の生徒たちはお構いなしに拍手をし、歓声をあげている。そう、僕達に向って。
二人の横に並んだ時にはもう皆ノリノリで、みんなでサムアップした。
明日のペリスクール新聞の一面を飾るのはきっと僕達だ。

「マッテタヨー!ジャパニーズ!」

撮影会も終わり拍手もまばらになった頃、タコ頭が話しだした。
彼の名はモーリス。ペリスクールの校長先生だった。
なんでも伝説のパイセンを目指して豆俵高校の生徒が毎年必ず1人か2人はここにやってくるらしい。
そして伝統通り、競い合う。
それはペリスクールが誇る学校一のイベントであり、生徒もこの日を楽しみにしているようだ。
生徒の異常な盛り上がりにも納得がいった。

「キョウはパーリーナイ。ゴー、ビーチ!」

学校裏のビーチで豪華なパーティーが始まった。
映画で見たようなビーチパーティーだ。

生徒は僕達を歓迎し、facebookで友達申請をしてくれた。
一夜にして、僕のfacebookの友達が450人も増えた。
同い年のエマとも仲良くなった。青い目が綺麗な、すごくかわいい女の子だ。

しかし僕達は忘れてはいけない。心を許し、親友になったとしても、戦わなければいけないことを。
この中の誰と戦うのか。何を競うのか。

戦いは一週間後だ。
明日から準備を始めよう。

白い光

「モンズ ビー アンビシャス発動シーマス!!」

パンパンパンパン!!!

モンズJrの怒涛のような叫びと大勢の生徒達による拍手が場内を揺るがす。

モンズJrがタコ頭の足をあと少しで掴む…その瞬間、僕達は白い光に包まれた—。

僕達『うわあああああああ〜〜〜!!』

一方その頃、目祖歩田宮家では…

文江「あーお腹へったー。お母さんなに作ってるの?」
母「今日の晩ご飯よ。
まず、
白米 …2合
昆布 …2cm四方
寿司酢 …大さじ3、4
寿司のり …4枚
スモークサーモン …約100グラム
アボカド …1個
クリームチーズ …大さじ4
ごま …適量
を用意します。」
レシピ引用—クックパッド

文江「わあ、すごい。食材も豪華ですね〜一体何ができあがるのでしょうか。楽しみですね〜。」

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母「巻きます。」

文江「あ、すご〜い。…これは!」

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母「はい、出来ました。今日の晩ご飯はカリフォルニアロールよ〜」

文江「やったー!美味しそう!」

母・文江「いっただきまーす!」

これから文明達の身に大変なことが起きるとはつゆ知らず、目祖歩田宮家は今日も平和であった。

タコ頭。

モンズJrが助走をつけてそう叫びながら走り出そうとした瞬間、大きなチャイムの音が鳴り響いた。
生徒達は何事も無かったようにクルッと僕たちに背を向け、一目散に校舎に入っていった。

「何なんだ、一体。。」

彼らの後を追うと、そこは日本と比べ物にならない程大きな体育館だった。
500人程いるだろうか、全校生徒がここに集まっているようだった。

前方に見えるステージには先生と思われる男が汗を拭きながらマイクテストを行っていた。
「テステス!」口でそう言っている感じがしたが、マイクが入っていないので聞き取れない。

つるつるのハゲ頭が暑さで茹でタコの様に赤くなっていく。そのうち、きいーーんという機械音と共にようやくその男の声を聞く事ができた。

「ペリスクールにジャパニーズがイン!メソーポタミア、メーン!メメーン!」

何故か僕たちがここに来る事が事前に先生にまでバレているらしかった。
壇上に上がるように手招きをされると、500人の生徒が一斉にこちらを振り向き、僕たちに道をあけるように後ずさりしていく。その間をゆっくりと歩きながら、ついに何かが始まる予感がした。
ステージに上がって何をさせられるのであろうか。

人前に出る事になれていない父さんは既に緊張をしているようだった。母さんから昔聞いたのだが、知人の結婚式の挨拶をしている途中に緊張の余り白目を向いて倒れたらしいのだ。30人程の式だったらしい。そんな父さんを心配しながら僕らはステージに上がった。

「パン、、、パン、、パン、パンパンパン!!!」
と拍手で出迎えられた僕らはそれが始まりの合図である事に気づいた。
モンズJrは、いきなり校門の続きと言わんばかりに助走をつけて

「モンズ ビー アンビシャス発動シーマス!!」
とそのタコ頭に向かっていった。