砂漠のど真ん中に出ると、早速喉がカラカラな事に気づいた。
どうしてマドマーゼル亀ノ子に亀ではなく水をもらって来なかったのか文明は自分を責め、亀の甲羅に自分の頭を何度もぶつけた。
「僕は、バカか!砂漠に水ってベタすぎだろ!そんな事すら気づかないなんて!」
文明の額からひと筋の血がしたたり落ち、唇を潤した。
少し生臭いその血は一瞬ではあったが口の乾燥を潤してくれるようだった。
「なるほどな、まだ血は温かいってことか。この血が流れている限り、僕はやれる!僕だってまだ彼女を作ったり、デートをしたり、やりたい事が山のようにあるんだ!ここで死ぬわけにはいかないんだ!!!」
そう天高く叫ぶと、手に持っていた亀に謝った。
「すまん、苛立っていたんだ。お前も痛かっただろうな・・。」
許してはくれまい、でも何度も何度も甲羅をさすってやった。
すると砂まみれの甲羅に何か書いてあるではないか!!
「な、なんだこれは!」
文明は、さらに手で砂を丁寧にはらった。
マドマーゼル亀ノ子は自分が託した亀を文明が優しくなでたとき、そこにホテルまでの地図が現れるように仕掛けをしておいたのだ。
「こ、これは・・・!!!!地図だ!!!!宝の地図だ!!!
マドマーゼル亀ノ子。イカシタ事しやがる。。あいつはただのババアじゃなかったんだ。」
文明は亀を突然大事に抱え、何日も砂漠を歩き回った。
この先には宝がある!
もしかしたら億万長者になって僕も伝説の男になれるのかもしれない!
そう信じて。
文明の服がアキラのようにズタボロの布一枚になった頃、ようやく見慣れた景色にたどり着いた。
「あ!ホットドック屋だ!!!!!」
ホテルリバーサイドはもうすぐだった。
ただこの時文明はそこにあの伝説の人物が大騒ぎをしている事なんて知るよしもなかった。