「ど、どうしてこのこけしがここに・・・!!」
大女将がゆっくりと話はじめた。
「このこけしはね、この旅館の裏山の頂上にある神社に祭られているものなの。それがどうしてここに!?
今朝お参りに行ったときには何も変わりはなかったのに・・・。信じられないわ。」
大女将は腰を抜かしたまま立ち上げれないでいた。
「女将さん、その包み紙はなんでしょうか?開けてみなはれ?」キモサベが拾い、大女将にくしゃくしゃの紙を渡した。
「何かしら、こわいわ。」そっと開いた瞬間、大女将は泡を吹いてその場に倒れた。
「キャー!!!!」っと叫ぶ千夜ちゃんをキモサベが支えたが、彼女もまた気を失ってしまったようだった。
「私が見るわ。」由美が女将の手からその紙を半ば奪うようにして取った。
「どれどれ。」そう言ってはみるものの、由美も若干顔がこわばっていたが、こう続けた。
さあコケシ祭りのはじまり、はじまり
50年に一度のこの日がやってきました
メンバーはそろっているようですね
祭りを制するものにはコケシパワーが与えられるだろう
「な、何これ?どういう事?誰か分かる人いないの?」
由美がそう周りを見渡すと、仲居さん達の間から1人の男が出て来た。この宿の料理長だ。
よぼよぼとゆっくりと歩く足取りと、顔に深く刻まれたシワから見てもゆうに90歳は越えているであろう。
「あー、あー、えーっと、こういう事じゃ。そう焦るでないぞ。今説明するからな。」
そういうと、その場にあった椅子に腰掛け、手に持っていた湯のみのお茶をズズっと飲みだした。