カリフォルニアの太陽がじりじりと照りつける中を歩き続けた僕は、ウィンナーパーティーによって太った身体が完全に元通りになっていた。
むしろ色黒になりすっかり夏のオトコだ。弱々しい動きとげっそりとした顔は別として。
「マミー!アイムホーム!」
エマがテンション高くドアを開けると、お菓子が焼ける甘い香りがして少し元気になった。
奥の方からパタパタと駆け寄ってきた女性はエマと同じ青い目、美しいストレートヘアーだ。
少しふくよかな、しかしとても綺麗なその女性はエマを見るなり笑顔でエマに抱きついた。
「エマ!ハーイ!」
二人は英語でペラペラと話したあと、エマのお母さんが今存在に気づいたかのように僕を見る。
「ハ、ハロー。」
彼女の母親に初めて会う場面というのはたいてい緊張するものなのだが
歩き続けて日にちの感覚すらないほど疲れていた僕は、出来る限り背筋を正して挨拶するのがやっとだった。
「oh!ハーイ!」
「ママ、文明よ。ママに会いたいって言うから連れてきたの!!」
「ハハハ!スゴク疲れているわね、入って入って!何か食べないと死んじゃいそう!」
エマに背中を押されてリビングのテーブルに腰掛けると、エマの母親がキッチンから何かを持ってきた。
目の前に出されたのは、手作りのレモネードと、ホットドッグ。
またウィンナーか…。
うんざりするほど食べたホットドッグは、一口食べるとやっぱりうまい。
エマは隣で母親特製のカントリーマアムをつまみ食いしていた。
食べ終えてすっかり元気になった僕は、エマの母親に改めて自己紹介をしてさっそく本題に迫った。
「のりおじさんの事を聞きたくて来ました。あやふやだけど、多分修学旅行は残り半分くらいになっているはずです。
ペリスクールの四天王との頭脳戦にはなんとか勝利したけど、僕達はこれからどうすべきなのか、手がかりが全くないんです。」
「ねぇママ、NORIOについて彼に何か教えてあげてよ!」
「OKOK。そう急がなくても教えてあげるわよ。でも話は彼が帰ってきてからにしましょう。」
「彼‥?」
その“彼”は1時間ほどで帰ってくるらしい。
それまでエマの部屋で彼女の子供の頃の写真を見ながら過ごすことにした。
彼女は子供の頃から天使だった。
「ただいま戻りました。」
遠くから微かに声が聞こえた。“彼”が帰ってきたのかもしれない。
とんとんと階段を登る音がして、ガチャっとドアが開いた。
「お前‥!!なんでこんなところに!??」
思ってもみなかった人物を目の前にし、思わず立ち上がり大声を上げた。
「久しぶりだな、文明!しばらく見ないうちに、夏のオトコになりやがって!!」
美智也が笑顔で立っていた。