ーカランコロン
「いらっしゃい。ランチは終わったよ」
店のドアを開けると、そう広くない店内にマスターが一人立っていた。
「僕ら、ホットドッグチャレンジがしたいんだ」
マスターは食器を拭く手を止め、5人の方に目をやるとしばし沈黙の時が流れた。
張り詰めた空気の中、男6人が無言で見つめ合あう。
店内はコーヒーのいい香りが立ち込めている。
そのせいかまた余計にお腹が減ってきた。
「…正気だな?」
先に口を開いたのはマスターの方だった。
「ああ!この5人で勝負だから全員勝てば250ドルは頂くぜ」
マスターは僕らに何も聞かず「オーケー」とだけ言うと奥の厨房へと消えていった。
隣に座っている父さんに目をやると手が震えていた。
「おじさん…武者震いってやつ?かっけえっす…!」
僕が声をかけるより先に榎戸が真顔で言った。
「いやぁ〜おじさん低血糖でなぁ。薬は家だしな、ハハハ」
大丈夫大丈夫…と小さく笑う父さんの顔からはすでに変な汗が噴き出している。
こんなことで無事に勝てるのだろうか。
一抹の不安がよぎり、僕らの間に再び長い沈黙が訪れた。
誰一人として言葉を発することもなく、小一時間程待ったところでマスターが厨房から出てきた。
準備が整った様だ。
5人それぞれの目の前に出されたのは、全長3メートルはゆうに越えるであろう巨大ホットドッグであった。